殺氣

生命は寒熱のバランスを保っている。

暖かさは安心し、寒さは危険を感じる。

『殺氣』とは生命を終わらせようとする氣。

熱を奪い、寒を求める。

冷たく、冷酷で、容赦はない。

人が人の生命を奪うばかりではない。

自然界、物質、空氣、場所、

憎悪や敵意、自虐的精神など、

環境や精神からでも生まれ、

他人からだけでなく、

自分自身が自分自身に向けても

発生する氣。

その反応は体表に現れる。

所謂「寒氣」というものを感じる。

数秒前、数ミリ前、数呼吸前とは異なる、

殺氣という寒氣。

毛穴や皮膚、血管や感覚が

その殺氣を察知して反応する。

近ければさらに硬直し、

遠ざかれば緩んでいく。

攻防どちらの行動を起こす瞬間も

殺氣は寒から熱に変わる。

静から動に変わる。虚から実に変わる。

空氣の動き、温度・湿度の変化、

ごく僅かな変化を読み感じる。

自分自身の髪、皮膚、鼻、耳、目、毛穴、

血管、血流、脈、呼吸、発汗、

全ての反応を認識する。

殺氣は広範囲に及ぶほどすぐには動かない。

徐々に目的の方向へと促されていく。

本来の生命の温度を忘れ去られていく。

生命が危機を感じた瞬間では遅い。

寒を感じ、熱をおび始めた時、

生命は最も危機にさらされる。

その変化は風によって認識しにくい。

寒のようで熱を感じ、熱のようで寒い。

内部は熱く感じるが風によって冷やされ、

外部は熱く見えるが風によって冷やされる。

感覚という認識と現実が異なると

人は内部で熱が上がる。

逆上、興奮、活動、不休、消耗となり、

『氣は緩む』。諦め、決断できず、防げない。

殺氣という言葉は現代で使うことはない。

しかし、生命に危険を感じるという瞬間の反応は

日々、日常的に生活習慣で現れている。

四季や六氣(風暑湿燥寒熱)の変化、

ストレスや対人、疲労や習慣など

食習慣や活動、休息や睡眠のバランスなど、

時間をかけて広範囲からの殺氣を受けている。

今、自分自身に起きている些細な変化や反応、

それが生死に関係すると危機感を持つべきである。

 

健康元鴻(けんこうげんこう)

中村元鴻 Genko Nakamura